アイアンプラネットの今とこれから
工場見学や溶接体験など、鉄に親しむさまざまなアクティビティが楽しめるプロジェクト「アイアンプラネット」。一体どういう経緯で生まれたのか、そして今後の展望を小林社長に聞いてみました。
「溶接を実際に試すのは始めてだったのですごくドキドキしました! なぜ小林さんはこういった取り組みを始められたんですか?」
「そもそもの話になってしまうのですが、鉄工所をはじめとしたものづくり業界は若い人がほとんど入らず、人材不足が深刻化しています。じゃあどうすればいいのか。私はまず、少しでも多くの人たちにものづくりへの興味を持ってもらうことが重要だと考えました」
「たしかに、そもそも業界がどんなところかわからないと、仕事の選択肢に入らないですよね」
「まずは溶接に興味を持ってもらうため、工場の中に一般の方が気軽に溶接を体験できるような場所を作りました。溶接がどんなものかを説明するよりも、まずは実際にやってもらったほうが早い。そうした場所づくりが必要だと思ったんです」
「私も溶接についてはぼんやりとした知識しかなかったのですが、今回の体験で溶接との距離がグッと近くなりました」
「やはり溶接って、気難しいおじさんが眉間にしわを寄せながらやっているようなイメージが強いと思うんです。工場で何をしているのかをオープンにすることで、若い人向けに敷居を下げる意味合いもありました」
「工場に勤務されている職人のみなさん、とても気さくでやさしいですよね。寡黙で気難しい人ばかりだと思っていたんですが、全然そんなことなくて」
「そうおっしゃっていただけてうれしいです。おかげさまで若い人たちも溶接体験に訪れてくれるようになりました。ステレオタイプな業界のイメージを変えていきたいですね」
「いろいろたくさんありすぎるのですが、もっとも現実的な話では、長田工業所の家具ブランドを作りたいと考え、すでに試作品づくりにも着手しています」
「こちらにあるスツールが、第1弾として制作したものですね。これからは机とか棚などを作って、海外の富裕層向けに展開していくつもりです」
「鉄工所発の家具ブランドってすごいですね。スタックできるスツールもとてもおしゃれ!」
「今の目標は、来年の春にイタリア・ミラノで行われる家具の展示会に出展することですね。なんかイタリアってかっこいいなっていう単純な理由ですけど(笑)」
「実はもうひとつ新しくやろうとしていることがありまして。これは私の造語なのですが、ファクトリーアートメーション(仮)【※】といって、工場の人がもっと働きやすくする仕組みづくりを追求していきたいな、と」
【※】工場の自動化「ファクトリーオートメーション」 (Factory automation)とアート(art)を組み合わせた造語
「簡単にいうと、感性工学や心理学を用いて、いつも働いている工場をカッコいい職場にしていく事業です。今風に言えば“エモい”工場でしょうか。先ほどの人材不足の話とも重なりますが、若い人が『こんなカッコいい工場で働いてるんだぜ』と言えるような工場にできたら、もっと人材も増えて業界が活発化すると思うんです」
「たしかに自分が働いている工場がカッコよかったら人にも自慢できるし、働く人もモチベーションも上がるかもしれないですね」
「自社のみならず、業界全体に向けて何ができるかということをいつも視野に入れています。アイアンプラネットの活動もそうですが、若い人がものづくりに全般に興味を持つきっかけになれたらうれしいですね」
まとめ
機械の音が鳴り響く工場見学から火花飛び散る溶接体験まで。今回訪れた長田工業所では、実際に飛び込んでみないと知らなかったものづくりの現場や溶接の奥深さを学ぶことができました。業界をリードするその動きには、次世代のものづくりを活性化させるヒントが隠されているのかもしれません。
▼ 長田工業所(アイアンプラネット)
http://iron-planet.net/
公式サイトから溶接体験などに申し込みできます。
〒919-0404
福井県坂井市春江町西長田41-1-1
TEL:0776-72-1164